生命保険/<転換>について
生命保険には<転換>という制度があります。
この<転換>には、いい<転換>と悪い<転換>があります。
通常、わたしたちがこの制度を必要とするケースは、実際のところ、ほとんどありません。
それでも<転換>が行われています。
なぜでしょう?
(正しい転換)
保険の<転換>というのは、保険Aを保険Bに移すことをいいます。
同じ保険会社の中で行われます。
別の会社へ移すことはできません。
たとえば、ここに「終身保険」があります。
しかし、もう死亡保障は必要ありません。
いまはむしろ老後の生活資金が心配です。
こんな場合、この「終身保険」をいったん解約します。
解約すると、解約返戻金が戻ってきます。
この解約返戻金を元手にして、「個人年金保険」に加入します。
もちろん、解約返戻金で「個人年金保険」の保険料をすべてまかなえるわけではありません。
一部です。
いわゆる、頭金、です。
こうしたやり方が、本来、正しい<転換>なのです。
この場合、契約者は、もう死亡保障がいらないのです。
でも、生活資金は準備しておきたい。
この目的のために、<転換>制度を使っているわけです。
※ ※ ※
けれども、こういった正統な<転換>の実例を、わたしはあまり聞いたことがありません。
実際、ほとんどないでしょう。
(悪い転換)
実際に、保険契約の現場で行われている<転換>は、もっとズルいやり方で行われています。
ほとんどが漢字系生保の外務員さんによって行われています。
※ ※ ※
「あなた、こんど子供が生まれたんでしょ?」
「はい」
「いまの死亡保障じゃ足りないよ。もっと、増やしなさいよ」
「ええ。・・・でも、掛け金が高くなるし・・・」
「だいじょうぶ。いい方法があるから」
※ ※ ※
こんな切り口で外務員さんはお客さんに迫ります。
さて、このトークのあと、外務員さんは、どんな保険を提案するでしょう?
先にわたしの提案を書きます。
わたしがこの外務員さんの立場なら、やることは単純明快です。
わたしなら、このお客さんが現在はいっている保険を<増額>します。
死亡保障が現在1500万なら、これを、たとえば、2500万に増やします。
契約そのものは生き続けています。
※<増額>についてわかりやすい例をあげると、あなたの自動車保険が、対人1,000万だったとします。
でも、それでは不安になったので、あなたは、代理店さんに電話して、対人を無制限にして、
とお願いします。
代理店さんは、二つ返事で了解するでしょう。
期間の途中であっても、こういった<増額>は自由にできるのです。
手続きに多少の違いはありますが、考え方は、生命保険だってこれと同じです。
ところで、外務員さんはわたしと同じ提案をするでしょうか?
答えは、NO、です。
外務員さんが提案するプランは、おそらく、つぎのようなものです。
1)いま加入している保険を「解約」する。
2)「解約」で戻るお金を、新しい保険の頭金にする。
3)新しい保険は、死亡保障額が増えているけれども、その割には、掛け金が低く抑えてある。
※ 1)と2)は、上で取り上げたいい<転換>と同じです。
しかし、このプランの場合、3)の段階で、ひたすら保険料を安く見せかけるためだけに、
この<転換>を使っているのです。
見かけ上、いま保険料は安いけれど、その裏にどんなマイナスを抱えているか、
このことを説明する販売員はほとんどいないようです。
ここが問題なのです。
保険は目に見えない商品です。
目に見えない商品であるがゆえに、このような<操作>がまかり通ってしまうのです。
新しい保険に切り替えるということは、このお客さんは、その時点の年齢で、
あらたに保険料を設定することになります。
いま35で、前の保険が25の時の契約だとすると、10歳分高い契約年齢で、
このお客さんは、新たに契約をすることになるのです。
※この点に関しては<増額>の場合もいっしょです。
しかし、<増額>の場合は、<増額>した部分の保険料だけが、その時点の年齢で決まります。
でも、<転換>の場合は、契約そのものがすべてその時点の年齢で再計算されるのです。
※ ※ ※
さて、10年前の予定利率は、まちがいなく、現在より高い水準にあります。
いったん解約して、新しい契約にするということは、高い予定利率を、
現在の低い利率のものに変えてしまうということを意味しているのです。
予定利率は、低い方が、保険会社にとって有利です。
※ ※ ※
このお客さんは、とりあえず、いま払う掛け金が、思ったほど高くないからいい、と感じるかもしれません。
でも、実際には、相当ソンしているのですよ。
単純に<増額>すれば、それでいいのです。
「でも、<転換>の方が、<増額>より、月々の掛け金が安いよ」
こんな反論もあるかもしれません。
こんな時、わたしはよく図を書いて説明したものです。
<増額>の場合と、<転換>の場合を、それぞれ図に書きます。
それから、それぞれ、トータルでいくら払うか、また、60歳か65歳の払込期間終了の時点で、
<増額>した契約の資産価値はいくらか、<転換>した契約の資産価値はいくらか、
それぞれ、おおまかな数字ですが、図に書き込みました。
お客さんは、みな、納得されます。
<増額>に利があることを納得されるのです。
いま現在の掛け金が安いのは、単なる<見かけ上のトリック>であることを理解するのです。
<転換>を使うやり方はいまも続いているらしい・・・
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最近はアカウント方式だとか、保険口座だとか、新しい切り口の保険が出てきていますが、
<転換>によって新しい契約に移行させようという保険会社の思惑は、
以前と何一つ変わっていないようです。
裏を返すと、漢字系生保の財務内容は、それほどに厳しい状況にあるということなのです。
格付け機関であるスタンダード&プアーズ社も、
この点を指摘しています(「日本の生命保険業界の展望」)。
いずれにしても、<転換>は、通常、ほとんど必要のない制度です。
この制度を使わなくても、わたしたちはいくらでも保険の設計ができるのです。
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