保険エッセイ/売り手に問題があるのか、買い手が悪いのか
社会人になって、ちょっとだけ落ち着いた頃のことでした。
第一生命の外務員の方がわたしの自宅に来たのです。
アポなしです。
その方はWさんという方(女性)で、
なんでも、わたしの兄の職場にWさんの息子さんも勤めていて、
したがって、全然知らない仲ではないし・・・とかなんとか、
まるで理由にもならない理由を並べて、親しげな挨拶を玄関でするのです。
Wさんは当時50歳前後で、
これは後で知ったのですが、
第一生命のその地区の営業所で、数年間トップの座を占めている方だったのです。
どうりで、たいへんな迫力・パワーの持ち主でした。
お話を伺ううちに(いつの間にか居間に上がりこんでいました)、
わたしも、なんとなく生命保険に入らなければいけないような気持ちになってきました。
死亡保障も、たしか3,000万はあったと思います。
入院の特約もありました。
その他の特約も、いくつかついていました。
サインし、印鑑を押しました。
月々の保険料は、23,000円くらいだったと思います。
(いま思い出しましたが、サインし、印鑑を押したのは、
2度目の訪問時です。初回は、話を聞いただけです)
それから数年して、またWさんが訪ねてきました。
わたしは独身でしたが、Wさんは、
「どうせそのうち結婚するんだから、いまのうちにもっといい保険にはいっときなさいよ。
掛け金だって、たいして違わないから」といって、
設計書を見せてくれました。
いま考えると、典型的な<転換>の設計書でした。
死亡保障は4,000万くらいはあったのかな・・・?よく憶えていません。
保険料は、25,000円くらいだったと思います。
わたしはサインしました。
印鑑も押しました。
なぜかわたしは転職しました。
損害保険の代理店になろうと目論んだのです。
外から見ると、なんだかいい仕事に思えたのです。
ある損保の研修生として3年間の修行に入りました。
給料をもらいながら、勉強し、契約を取るのです(いまのニートを逆さまにしたようなものですね)。
最初は損害保険だけでした。
でも、すぐに生命保険も守備範囲に入ってきたのです。
そんなこともあり、わたしは、第一生命の生命保険を解約することにしました。
自分で扱う生命保険に切り替えるためです。
Wさんは素っ頓狂な声をあげました。
Wさんは、じつは、ものすごく率直でざっくばらんな方だったのです。
「ヒェー!あの、たのむから、あと2ヶ月待って。そしたら、すぐ解約するから」
ようするに、契約の<転換>をしてから、
そのとき、まだ丸2年経過していなかったのです。
手数料のバックを避けるためには、あと2ヶ月が必要だったのです(たぶん)。
ヘンな引き留めにあったら、わたしも意地になっていたでしょう。
でも、こんな開けっぴろげな対応をされたら、
「しょうがないなあ」と思うしかありませんでした。
わたしは2ヶ月待ちました。
そして、解約したのです。
いま、最初の契約と<転換>した契約について考えています。
あのとき、どんな気持ちで契約したのだろう、と。
よく憶えているのは、とにかく、ぼんやりした感じ、といったところ。
月に23,000円とか25,000円も支払っているのに、
とても漠然とした気持ちでいたようなのです。
Wさんの説明を聞いても、頭では理解していたと思うのですが、
いえ、それも怪しかったかもしれません。
つまり、よくわかっていなかった。
それと、自分が死んだらいくらおりるとか、
老後のために入っておくとか、
そういうことに対して、これといった<実感>のないまま、
ただすすめられるとおりに契約していたような気がするのです。
わたしは、健康にも特に不安はありませんでした。
また、自分が死ぬことなんて、想像すらしませんでした。
一般論としては、もちろん、いつかは死ぬと思っていました。
でも、現実的に、自分が死んだら・・・と考えたわけではありませんでした。
まして、老後について、切実に考えたことなど全くなかった。
でも、それなら、生命保険になど入らなければよかったはずです。
それなのに、わたしは入ったのでした。
しかも、内容もよく検討しないで。
なぜそんなことをしたのだろう、といまでは思います。
外見はどうであっても、わたしたちの住む日本社会は、
一皮むけば、生き馬の目をむく競争社会です。
そういう社会に住みながら、わたしにはあまりにもスキがありすぎたのです。
売り方の問題を問う前に、まずは、そこのところを反省すべきだと思います。
それから、環境ということもあったと思います。
日本は、世界1の保険大国です。
特に、生命保険大国です。
日本の生命保険加入者が支払う保険料(掛け金)総額は、
全世界の人々が支払っている総額の、約4分の1だそうです。
なぜか、保険が好きなのです。
なんとなく、そこそこのものに入っておかないといけないようなムードが社会に漂っています。
社会保障が不十分なのかもしれません。
(それが、隠れた原因になっているのかも)
買い手はもっと自覚を。そして、売り手はやり過ぎてはいけない
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いうまでもなく、わたしは賢い消費者ではありませんでした。
自覚が足りなかったと思います。
だから、20代の独身なのに、死亡保障3,000万の保険に入ったことも、
その数年後に<転換>の話に乗って、
死亡保障4,000万の保険に再加入したことも、
多くは私自身の責任だと思っています。
なぜなら、わたしは子供じゃなかったのですから。
買い手としての責任は、やはり、一定の割合で、しっかり問われるべきです。
さて、その上で、売り手の側に話を移そうと思います。
買い手が自己責任で商品を選ぶべきなのはもちろんですが、
しかし、この先社会がどう変化しようと、
商品に関する情報量において、
買い手より売り手がより多くを持ち続けるだろうという点は、
今後も決して変わらないはずです。
売り手と買い手には、いつの時代も、必ず、情報の不均衡があり続けるのです。
売り手が、この点では、常に優位にあります。
いくら買い手にもっと勉強しろといっても、
やはり、限界というものがあります。
なぜなら、それを商売にしているわけではないのですから。
いっぽう、わたしは、商売に<かけひき>はつきものだと思っています。
したがって、買い手に油断があれば、売り手に有利な商品を買わされることは、
ある意味、仕方がないと思います。
これは、自分が売る側に立てば、認めざるを得ないのです。
キレイ事はいえません。
ただ、ここには一定の歯止めが必要です。
どんなに買い手が未熟であっても、商品知識に乏しくても、
それに乗じて、度を超した商品を売りつけてはいけない。
それは「悪党」のすることです。
売り手は、ここのところを自覚すべきです。
たとえば、<転換>は、
一般の消費者には、あまりに手が込み入り過ぎています。
また、<全期型>と<更新型>の説明は、
充分な時間を割いて、丁寧に説明しなければいけません。
そして、最も重要なこと、それゆえ、一番時間を割いて説明すべきなのは、
「保険期間(=保障期間)」です。
その保険がいつからいつまでを保障する保険か、
買い手が理解できるよう、わかりやすく解説しなければいけません。
わたしの接客経験からいっても、他の方の意見をうかがっても、
この点は一致しています。
保険加入者の認識が最もアイマイなのは、
この「保険期間(=保障期間)」なのです。
逆にいうと、このサイトをご覧になっているあなた。
あなたは、保険選びをする際、
保険期間が10年なのか、それとも終身なのか、
こういった点を最優先に検討してください。
いずれにしても、悪い売り手がいますぐ消えることはないでしょうから、
あなたは、少なくとも、20代の頃のわたしのような、
悪い買い手にだけはならないでください。
そのお役に少しでも立つなら、わたしはしあわせです。
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