生命保険/「定期付終身保険」


定期付終身保険」は、正確には「定期保険特約付終身保険」といいます。
他の保険は<単体>で解説しているのに、どうしてこの保険だけ特約付で扱うかというと、この「定期付終身保険」は、長いあいだ日本社会に君臨してきた、生命保険の代表的な契約形態だからです。





「定期付終身保険」を図にする


           




死亡保障が2階建て


死亡保障が<2階建て>になっています。

1階部分が主契約の「終身保険」。

2階部分が特約の「定期保険特約」。



「定期」という言葉が加入者を惑わしてきた


保険会社としては意図したことではなかったのかもしれませんが、「定期保険特約」の「定期」という言葉が、わたしたち消費者をしばしば混乱させてきました。

「定期」というのは、字義通り、<期間が定まっている>という意味にすぎません。

ところが、銀行の「定期預金」と混同して受け止める人が多く、なんだかよくわからないけれどお金が貯まる保険らしいぞ、というイメージでとらえられてきたフシがあります。

けれども、「定期保険」も「定期保険特約」も、期間が終了すると1円も戻りません。

0円です。

お金が貯まるのは、1階部分の「終身保険」です。




「このタイプの保険は売り方に問題があった


さて、いい法律があっても、運用の仕方で、悪い法律になってしまうことがあります。

この「定期付終身保険」も同じで、保険そのものは悪い保険ではないのですが、売り方に大いに問題がありました

どんな問題があったのか(あるのか)。

それをこれから解説していきます。




具体的な契約内容を見る



         


上の図は、実際の契約例です。

30歳男性。
妻と子供1人。

  • 主契約は「終身保険」です。
  • 特約が4つ付いています。「定期保険特約」、「3大疾病特約」、「入院特約」、「がん入院特約」。
  • 保険料の払込は、主契約が30歳から60歳まで。
  • 4つの特約の払込は30歳から45歳まで。
  • 4つの特約は、15年後の45歳切れます。
  • したがって、45歳になったら、契約を、<更新>する必要があります。



この契約のその後


さて、この保険に加入してから10年後、つまり40歳になったところで、この男性が死亡したとします。

保険金はいくら下りますか?

答えは、5,000万円です。

「終身保険」300万+「定期保険特約」4,700万=5,000万です。

でも、もしも46歳になったところで死亡したとしたら?・・・・・・契約が切れている?

そうですね。45歳で特約は切れますから、<更新>していなければ、「終身保険」の300万円しかおりません。

しかしこのタイプの保険に入っていれば、45歳になる前に外務員さんが「必ず」訪れます。心配はいりません(笑)。

訪れた外務員さんは、4つの特約部分の<更新>を告げます。

この男性はもちろん<更新>するつもりです。

だって、大きな死亡保障がなければ、万が一の時に妻やこどもが困りますから。

でも、おそらく、この男性はびっくりするでしょう。

びっくりした後、怒りだすかもしれません。

・なぜでしょう?

       ※  ※  ※

男性が怒るかもしれないのは、保険料がいきなり跳ね上がるからです。

・いままでは月々17,000円でした。

それが30,000円になるというのです。

保障内容はいままでとまったく同じです。

でも、保険料だけが高くなるというのです。



<更新型>と<全期型>


以上見てきたように、特約部分を10年とか15年毎に<更新>するやり方は、事前に十分な説明がないと、こうしたトラブルを引き起こします。

ところが、こうした契約の仕方には、その他の問題もあります。

この男性が、仕方なく納得し、その後の15年間この保険を続けたとしましょう。

すると、60歳までに支払う保険料(掛け金)の総計は、7,848,000円になります。

けれども、後でわかったのですが、この契約には別の支払方法があったのです。

それは、4つの特約部分の保険料を、30歳から60歳まで<更新>なしに連続して支払う方法です。

これは<全期型>と呼ばれる方法で、期間を通して保険料は一定です。

これで契約していれば、60歳までに支払う保険料の総計は7,040,000円で済んだのです。

つまり、約80万円少ないお金で同じ保障が手に入っていたわけです。


      ※  ※  ※


この男性が最初から<全期型>で契約していた場合、月々の支払いは19,555円です。

17,000円と19,555円の違いですから、知っていれば<全期型>を選択していた可能性は大です。

いえ、2,500円ほどの違いでも、やっぱり安い方がいいと思ったかもしれません。

けれども、ここで問題なのは、そういうことではないはずです。

<全期型>という方法があることを外務員さんが黙っていたことが問題なのです。

ここでのプランは15年の<更新型>でしたが、10年とか5年の<更新型>であれば、トータルの支払総額はさらに差が開きます。

やはり、こういうことは、事前に説明した上で契約しなければいけません。




さらに大きな問題が


しかしながら、<更新型>と<全期型>をめぐってのトラブルなら、まだいいほうです。

「定期保険特約付終身保険」には、さらに重大な問題点があるのです。

それこそが、みなさんも一度は耳にしたことがあるに違いない、あの悪名高い<転換>というやつなのです。

わたしもこのサイトを立ち上げるにあたって、当然、生命保険に関するいくつかのホームページを覗かせていただきましたし、ハウツー本も10冊ほど買い込み、研究しました。

いずれのサイト、いずれの本も、この<転換>を取り上げていないところはなく、また、これを悪し様に批判していないところは皆無でした(回りくどい表現ですみません)。

要するに、ちょっとでも保険の勉強をした人なら、<転換>の欠点をいわずにいられないわけです。

わたしも<転換>を批判します。

他の人がいっていることの繰り返しになるかもしれません。

しかし、それでもかまわないと思います。

みなさんに正しい知識を身につけていただきたいからです。



<転換>あるいは<契約転換制度>


生命保険には「契約転換制度」というものがあります。

一般的に<転換>と呼ばれています。

<転換>は、本来、何らいかがわしい制度ではありません

たとえば、いままで「終身保険」に入っていた人がいるとします。

事情があって死亡保障が必要なくなりました。

こんな場合、この人は、「終身保険」を「個人年金保険」に<転換>することができます。

「終身保険」には貯蓄機能があり、積み立ての部分がありますから、これを生かすのです。

保険の種類を変えることによって、それまで積み立てられていた部分を生かすことができるのです。

もっとも、わたしは、よほどのことがない限り、この<転換>を利用することはやめた方がいいと思います。

だまされる可能性が高いからです。



<転換>の実例


妻と二人暮らしの男性が下の図のような保険に入っていたとします。

※説明をわかりやすくするために、「定期保険特約」以外の特約は省略します。




この男性が34歳のとき、ようやく第一子が生まれました。

すると、さっそく保険の外務員さんがやってきました。

外務員さんは、「子供が生まれたんだから、死亡保障を増やしましょう。これからは責任が重くなるんだからね」といい、下のような設計書を見せました。


 


設計書を見せながら、外務員さんはこんな説明をしました。

「責任が増えたから、死亡保障を2倍にしました。いままでは、死んだら2,000万だったけれど、今度は4,000万。これで安心ですね」

男性は、これまでの保険と新しい保険を見比べました。

確かに、「終身保険」とその上に乗っかっている「定期保険特約」を足すと、いままでは2、000万、新しいのが4,000万。

うん、間違いない、と思いました。

外務員さんが続けて説明しました。
「ところで、掛け金なんだけど、いままでは月々8,200円だったね。それで、今度は死亡保障が2倍になるから、掛け金も2倍になるところなんだけど、それじゃあ困るよね?」

「うん、困る。給料そんなに上がってないから・・・」

「大丈夫。いいやり方があってね。ほら、ここにあるように、今度の掛け金は、月々12,000円。どう?これくらいなら、何とかなるでしょ?」

外務員さんは、そういって、設計書を見せながら、テンカン制度がナントカカントカとひとしきり説明を始めました。

でも、男性はよくわからないから、適当に相づちを打ちながら、理解しているフリをしていました。



<転換>の内容


さて、外務員さんがこのときどんな説明をしたのかは不明ですが、いずれにしても、つぎのような操作を行っていたのです。